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ARTICLEWebアクセシビリティは義務化された?罰則・ガイドライン・対応方法を徹底解説
Webアクセシビリティはすでに義務化されているか気になる方は多いでしょう。実は「合理的配慮の義務化」が本質で、対応は努力義務です。本記事ではいつから義務化されるのか、罰則、総務省ガイドライン、WCAGとの関係、企業が今すべき対応を解説します。
目次
【結論】Webアクセシビリティそのものはまだ義務化されていない

結論として、企業におけるWebアクセシビリティへの対応は、2025年現在「全面的な法的義務」ではありません。
義務化されているのはその一部である「合理的配慮の提供」です。ただし、対応しなくてよいわけではない点に注意しましょう。すでに法的義務になっているポイントもあることから、事実上の対応の必要性が高まっています。
そこでまずは、Webアクセシビリティの対応の現状と、すべて義務化されたと誤解されやすい理由を解説します。
改正障害者差別解消法(2024年4月施行)で合理的配慮のみ義務化
2024年4月、障害者差別解消法(正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)が改正されたことに伴い、これまで努力義務だった障害のある人などのマイノリティに対する「合理的配慮(不当な差別的取り扱いの禁止)」が、行政機関だけでなく民間企業でも義務化されました。
合理的配慮とは、「障害のある人から要望があった場合に、過重な負担にならない範囲で環境を調整すること」を指します。
実際、内閣府の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」では、情報アクセシビリティの向上も対象に含まれると明記されていることから、企業が運営しているWebサイトにおいても、情報アクセシビリティへの取り組みの重要性が高まっています。
(参考:内閣府「改正障害者差別解消法が施行されました」)
環境整備は「努力義務」のまま
現在「合理的配慮」が義務化されましたが、これに対するWebアクセシビリティ全体の整備は、現在も努力義務にとどまっています。
事業者については、不当な差別的取扱いの禁止が法的義務とされる一方で、事業における障害者との関係が分野・業種・場面・状況によって様々であり、求められる配慮の内容・程度も多種多様であることから、合理的配慮の提供については、努力義務とされている。
引用:内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」
つまり、合理的配慮と環境整備は次のように区分されます。
- 合理的配慮:要望があった場合の「個別対応」は義務
- 環境整備:誰でも使いやすくする「事前対策」は努力義務
このことから、2025年時点では企業では要望を受けない限りは事前対応を行わなくても、直ちに法的ペナルティを受ける可能性は低いと判断できます。
とはいえ、将来的に環境整備が義務化する可能性もあります。義務化してからの対応に追われないように、早い段階でWebアクセシビリティ対応にとりかかるのがベストです。
「すべて義務化された」と誤解される理由
Webアクセシビリティは、よく「全面義務化された」と誤解されていますが、その理由は次のように情報が混在しているためです。
- 「合理的配慮の義務化」「Webアクセシビリティ全体の義務化」は別物
- 海外(特に米国)の訴訟事例が日本にも当てはまると誤認されている
- 国・自治体の対応が「法律上の義務」だと勘違いされている
たとえば、国際的なWebアクセシビリティのガイドラインは「WCAG 2.2」というバージョンであるのに対し、日本国内で参照される規格である「JIS X 8341-3:2016」は、古いバージョンの「WCAG 2.0」をベースに作られています。
このように、Webアクセシビリティへの対応基準にズレがあることから、どこまで義務化されたのかわからないと混乱を招いています。
Webアクセシビリティはいつから義務化される?

いつからWebアクセシビリティの対応が義務化されるか、ある程度の予測を立てておきたい方も多いはずです。
今後の、義務化される可能性について見ていきましょう。
「義務化の施行日」はまだ決められていない
Webアクセシビリティ全体の「義務化の施行日」は、2025年現在まだ決まっていません。
国としても「いつから義務にする」と明言していませんが、義務化を前提とした運用が進められていることから、早めにWebアクセシビリティへの対応が求められます。
これから義務化の可能性はある?ない?
Webアクセシビリティへの対応の義務化は、将来的に制度変更が行われる可能性はあります。以下に想定されるシナリオをまとめました。
- 国や自治体、特定業種(公共性の高い分野)への義務化
- 一定規模以上の企業への義務化
- WCAGやJIS準拠レベルの段階指定(A → AA)
- 一般企業の義務化
ただし突然、一斉に義務化される可能性は低いと考えられます。それはWebアクセシビリティは、企業規模・業種・技術体制による差が大きく、一律で義務化すると企業の「過重な負担」になるためです。
何年先になるかは予測できませんが、将来的な制度変更にも対応できるよう、この機会にWebアクセシビリティ対応を検討してみてはいかがでしょうか。
Webアクセシビリティの対応に罰則はある?

結論から言うと、日本国内においてWebアクセシビリティ未対応そのものに対する「直接的な罰則」は存在しません。
Webアクセシビリティ対応は、法律上、「環境の整備」に位置づけられており、現在も努力義務のままです。ただし、「罰則がない=何もしなくてよい」わけではありません。
努力義務である以上、社会的要請は年々強まっている点に注意が必要です。たとえば海外、特にアメリカでは、Webアクセシビリティ未対応を理由とする訴訟が急増しています。
UsableNet社の調査によると、2018年時点で2,314件だった訴訟件数が、2022年には約4,061件まで増加しました。ここからもわかるように、国内で義務化が進めば、海外と同じように訴訟を起こされるリスクがある点に注意しなければなりません。
Webアクセシビリティへの対応放置で生じる3つのリスク

Webアクセシビリティへの対応を後回しにすると、見えないリスクが積み重なっていきます。Web担当者として、とくにおさえておきたいリスクは以下の3点です。
- ユーザーの取りこぼしと検索評価の低下
- 企業ブランドイメージの低下
- BtoB取引における信頼失墜
順番に見ていきましょう。
リスク1:ユーザーの取りこぼしと検索評価の低下
まず一つめにおさえておきたいのが、ユーザーの取りこぼしと検索評価の低下です。色覚特性・色覚多様性のある方や高齢者、スクリーンリーダーという「画面の文字や画像を音声で読み上げてくれるソフト」を使う利用者は、サイトの作りが配慮されていないと情報にたどり着けず、途中で離脱してしまいます。
こうしたユーザーへの配慮は、実はGoogleといった検索エンジンからの評価とも密接に関係しています。たとえば見出しタグ(H1やH2といった、文章の構造を示すタグ)を正しく使うことは、スクリーンリーダーの利用者がページの構造を把握する助けになると同時に、機械であるクローラーがページ内容を理解するうえでも重要な手がかりになります。つまり、アクセシビリティを意識してHTMLを整えることは、結果的に検索順位の向上にもつながることが期待できるのです。
逆にHTMLの構造化や画像に付ける説明文(alt属性)が整っていないと、検索流入の減少や直帰率の上昇といった副次的な悪影響が及ぶ場合もあります。Webアクセシビリティへの対応を放置すると、本来獲得できたはずの顧客と、検索エンジンからの評価という両方のチャンスを失いやすくなるのです。
リスク2:企業ブランドイメージの低下
二つめは、企業ブランドイメージの低下という長期的に影響するリスクです。近年は「誰一人取り残さない」という考え方が、さまざまな業界で重視されるようになりました。そのためWebサイトにアクセシビリティに不備があると、意図せず誰かを排除していると判断されるリスクがあります。
とくに医療や金融、行政などといった多くの人がかかわるサービスや、多様性への取り組みを掲げている企業ほど、その影響は大きくなる傾向にあるのです。Webアクセシビリティ対応が不十分なままであるとクレームが発生し、それが報道されれば、企業の評判そのものが下がり、顧客離れや売上減少という二次的な被害を招く場合もあるでしょう。
一方で、使いやすさに気を配ったWebサイトは「この会社は利用者のことを真摯に考えている」というイメージを生み出します。対応の有無ひとつで、企業への信頼が大きく左右されるといえるでしょう。
リスク3:BtoB取引における信頼失墜
三つめに見落とされがちなのが、企業間取引、いわゆるBtoBの現場で起こる信頼失墜です。公共機関や大手企業との取引では「JIS X 8341-3」という国内のWebアクセシビリティ基準のなかでも、AAという達成レベルへの準拠が条件として求められる場面が増えています。
この基準に沿った対応ができない企業は、たとえば入札の段階で不利になったり、既存の取引が停止されるリスクも考えられるでしょう。自社では気づきにくい部分ですが、発注元の担当者からすれば「Webアクセシビリティに無関心な会社」という印象は、契約継続の判断材料になりかねません。
将来的な取引先の拡大や既存の関係維持を考えるのであれば、早い段階からWebアクセシビリティへの理解を深めておきましょう。
Webアクセシビリティが義務化されようとしている背景

インターネットは、もはや若年層だけのものではなく、以下のような人々も日常的にWebサービスを利用しています。
- 高齢者
- 視覚・聴覚に制約のある人
- ケガや病気など一時的に操作が難しい人
- 外出先・騒音環境など不利な利用環境の人
NICT(情報通信研究機構)が令和5年に発表した「高齢者のインターネット利用率」の調査によると、65歳以上のインターネット利用率は男女ともに5割を超えており、60~64歳に至っては9割以上のユーザーがWebサービスを利用しています。
このような背景もあり、Webサイトがアクセシビリティ対応していないと「高齢者が利用しても文字が読みにくく、離脱される」「フォーム操作が難しくサービスの成約につながりにくい」といった問題が起こりやすくなります。
(参考:国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)「高齢者のインターネット利用率」)
義務化の前に理解したい国際基準・国内規格(総務省ガイドライン)

Webアクセシビリティ対応を検討する際は、国際基準「WCAG」と国内規格「JIS X 8341-3」を切り分けて理解することが重要です。
ここでは、義務化が始まる前に企業が理解しておくべきポイントを紹介します。
国際基準のWCAG 2.2
WCAG 2.2(Web Content Accessibility Guidelines)は、Webアクセシビリティ分野における世界共通の国際基準です。
W3C(World Wide Web Consortium)が策定するガイドラインであり、各国の法律・規格の土台として採用されています。
「グローバルサイト」「海外向けのECサイト」「多言語サイト」などを運営する場合には、現在の最新規格であるWCAG 2.2を前提に考えるのが安全です。
WCAG 3.0との違い
WCAG 3.0は、将来の標準を見据えた「作成中のドラフト(草案)」であり、2025年現在、国際基準としてもまだ未確定の要素です。
現在の国際基準は、WCAG 2.2ですが、将来的にWCAG 3.0が新たな基準として活用される可能性があります。
国内規格のJIS X 8341-3(総務省ガイドライン)
日本国内のWebアクセシビリティ対応は、「JIS X 8341-3:2016」が判断基準として重視されています。
前述した国際基準「WCAG 2.0(現行2.2の前バージョン)」に準拠しており、適合レベルAAを最大目標としたWebアクセシビリティの対応方法などがまとめられています。
(参考:ウェブアクセシビリティ基盤委員会「JIS X 8341-3:2016 達成基準 早見表(レベルA & AA)」)
企業が取り組むべきWebアクセシビリティの対応10項目

Webアクセシビリティに対応したい企業は、デジタル庁が公開している「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック(2025年10月16日)」を参考に、さまざまな利用環境や身体的特性を持つ人が利用できる次のようなWebサイトを構築していくことが大切です。
| 優先度 | 対応項目 | 失敗例 |
|---|---|---|
| 重大 | ①音声を自動再生しない | 広告や動画が勝手に音を出す |
| ②キーボードトラップを作らない | 動画などからフォーカスが抜けない(ストレス) | |
| ③1秒に3回超の点滅をさせない | 点滅アニメで発作を起こす人もいる | |
| ④自動で切り替わる動きは停止できるようにする | カルーセルが止められず読めない | |
| 必須 | ⑤画像に適切な代替テキスト(alt)を付与 | ロゴや図表が「画像」としか読まれない |
| ⑥キーボードだけで全機能に到達できる | マウス前提のUIで操作不能になる | |
| ⑦フォーカス順序を論理的にする | Tabキーで順番通りに移動しない | |
| ⑧フォーカスしている場所を強調する(枠線など) | 今どこを操作中かわからない | |
| ⑨フォーカス時・入力時に勝手に動作させない | 選択した瞬間に遷移/送信される | |
| ⑩制限時間を設けない(設けるなら延長・解除・通知を設定する) | セッション切れで入力が消える |
紹介したのはあくまで一例です。ガイドブックにはほかにも複数の対応方法がまとめられているため、優先順位を決めてひとつずつ対応していくことをおすすめします。
ビジネスにおけるWebアクセシビリティ対応のメリット
Webアクセシビリティの対応は、ただ法令を遵守するだけではなく、WebサイトのCVRや信頼の獲得、そして将来的なリスクの低減に役立つ投資です。
たとえば、多くのユーザーが利用できるWebサイトに改善することでCVRが高まり、売上の向上を期待できます。また、誰もが利用できるWebサイトという点を顧客に評価され、クレームや炎上を避けやすくなるなど、Webサイト運営における問題点を解決しやすいのがメリットです。
正確かつ効率的にWebアクセシビリティへの対応状況を診断したいなら

徐々に対応の必要性が増しているWebアクセシビリティですが、本当に正しく対策できているのか判断できないとお悩みの方も多いのではないでしょうか。特に、国内規格である「JIS X 8341-3:2016」への対応状況は、人力でチェックする際に膨大な時間がかかってしまいます。
そこで国内企業におすすめなのが、「Webアクセシビリティ診断・UI検証ツール SPIRAL ISSO」です。Webアクセシビリティのチェック作業を大幅に効率化できる便利なツールです。
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まとめ
2024年4月に施行された改正障害者差別解消法に伴い、現在ではWebサイトで合理的配慮への対応が義務化されました。
ただし、現時点では環境整備に関しては努力義務であるため、あくまで要望を受けた場合に対応するのみで構いません。とはいえ、急に義務化となった段階で着手するのは難しいため、なるべく今のうちからWebアクセシビリティに対応しておくのがおすすめです。