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ARTICLEWebアクセシビリティ ガイドラインとは?企業向けの改善ポイント
この記事では、2025年最新のWebアクセシビリティガイドライン(WCAG2.2・JIS X 8341-3)について初心者向けにわかりやすく解説します。具体的には義務化の流れやWCAGの4原則、企業が取り組むべき改善ポイント4つ、チェックツールまでまとめて紹介します。
目次
Webアクセシビリティのガイドラインとは?

Webアクセシビリティのガイドラインは、高齢者や障害のある人を含む、すべてのユーザーがWebサイトを円滑に利用できるようにする設計・運用の指針です。
単なる「やさしさ」や「配慮」の話ではなく、法制度・企業責任・SEO評価にも深く関係している重要な指標であるため、まずはガイドラインの概要をわかりやすく解説します。
Webアクセシビリティの「基準」はWCAGとJIS
Webアクセシビリティの基準には、国際標準のWCAGと、日本国内向けのJIS X 8341-3という2つの軸があります。
| 基準 | 概要 |
| WCAG (Web Content Accessibility Guidelines) | W3C(World Wide Web Consortium)が策定する国際ガイドライン |
| JIS X 8341-3 | 日本工業規格として定められたWebアクセシビリティ基準 |
日本の法制度や行政対応では、「JIS X 8341-3:2016(基準の2016年版)」を実務上の基準にすることが一般的です。実際、デジタル庁や総務省、金融庁が公開しているガイドブックや方針資料でも、2016年版がベースとしてまとめられています。
ガイドラインの役割
Webアクセシビリティのガイドラインが果たす役割は、次のように「誰にとっても公平なWeb体験を提供するための共通ルール」を明確にすることです。
- 多様な利用者を尊重している姿勢を示せる
- Webサイトの設計・改善における対応の抜け漏れを防止できる
- 制作担当者ごとの判断差を防げる
- 企業としての信頼性やブランド価値の向上につながる
実際、使いやすいWebサイトは利用者の満足度を高めやすいほか、リピーターを生み出しやすいのが特徴です。
ガイドラインが対象とするユーザー
Webアクセシビリティのガイドラインは、次のような能力に制約がある人をはじめ、さまざまな特性を持つ利用者を対象としています。
- 視覚障害
- 聴覚障害
- 視覚・聴覚の両方(盲ろう)
- 上肢障害
- 病気やケガといった一時的な障害
- 発達障害・学習障害・知的障害
- 色覚特性
- 高齢
日本では、こうした考え方をもとに「JIS X 8341-3」が整備され、初期の2004年版では主に視覚障害者への配慮が中心でした。その後の更新を経て、現在のJIS X 8341-3:2016では、より幅広い障害や利用環境を想定した基準へと進化しています。
実際、現在の国のWebサイトには、視覚障害者向けに「読み上げ機能」が標準搭載されています。

近年のSDGsの考えと同じく、「誰一人として取り残さない」Web体験を実現するための指針として活用されています。
なぜ今、Webアクセシビリティが重要なのか

多様性が尊重される現代では、特にWebアクセシビリティ対応の必要性が増しています。その具体的な理由を3つのポイントに分けて解説します。
Webアクセシビリティは、単なる配慮ではなく法令遵守・企業評価・ビジネス機会に直結する重要テーマです。対応の有無が、企業の姿勢や信頼性を判断する時代になっています。
法制度と「義務化」の流れあり
Webアクセシビリティが注目されるのは、内閣府が推進する「障害者差別解消法(正式名称、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」の改正により、合理的配慮が義務化されたことが理由です。
あくまで合理的配慮のみが義務化されたものであり、民間企業には罰則こそありません。しかし、対応しない状態は民事訴訟リスクにつながる可能性があります。
また指針などでは「過重な負担」でない範囲の対応と説明されているものの、一定の資本力やIT体制が整っている企業の場合、義務化の条件にあてはまるケースもあります。今後の対応次第で、どのような姿勢で法令と向き合っているかを、株主や社会から問われる場面が増えていくでしょう。
(参考:内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」)対応できないサイトは訴訟・炎上のリスクあり
Webアクセシビリティのガイドラインを無視し、未対応のまま放置すると、それが訴訟やWebサイトの炎上につながるリスクがあります。
実際、海外(特にアメリカ)では、障害を持つ当事者が「情報にアクセスできない」ことを理由に企業を訴えた事例もあります。
日本では訴訟件数は少ないものの、より現実的なのがSNSによる炎上リスクです。「指摘したのに改善されない」という事実が拡散されやすく、企業イメージを大きく損なう恐れがあるため、早急なWebアクセシビリティガイドラインへの対応が求められます。
ビジネス面での機会損失の可能性あり
Webアクセシビリティのガイドラインに未対応のままだと、次のような見えないユーザー判断により、サービスの機会損失が生まれるかもしれません。
- 文字が読みにくい
- 操作しづらい
- 購買など次の行動を起こしづらい
これは障害のある人に限らず、高齢者や一時的に不自由な環境にいる人も含まれます。問い合わせ数やCV(コンバージョン・成約)率が下がり、SEO評価やブランド信頼にも悪影響を及ぼすケースもあるため、早急なガイドライン対応が求められます。
Webアクセシビリティを理解するための2つの軸

Webアクセシビリティのガイドラインに対応するためには、国際標準である「WCAG」と、日本国内の実務基準である「JIS X 8341-3」という2つの軸を正しく理解することが重要です。
ここでは、それぞれのポイントを解説します。
全体の基礎となる「WCAG(国際標準)」を理解する
WCAGは、Web技術の標準化を推進する国際的な非営利団体である「W3C」が策定する世界共通のWebアクセシビリティ指針です。国や企業を問わず、各国の規格や法制度の土台やWebアクセシビリティのガイドラインとして活用されています。
WCAGの4原則(POUR)
WCAGは、Webアクセシビリティを4つの原則で整理しています。
| 4つの原則 | 概要 |
| 知覚可能(Perceivable) | 代替テキストや字幕で情報を認識できる |
| 操作可能(Operable) | キーボード操作など多様な操作方法に対応している |
| 理解可能(Understandable) | 内容や操作が予測しやすくわかりやすい |
| 堅牢(Robust) | 支援技術や将来の技術でも正しく動作する |
すべての達成基準の土台となる考え方です。この考えは、日本版のガイドラインである「JIS X 8341-3」にも取り込まれています。
2025年時点の最新版は「WCAG2.2」
WCAGは継続的に更新されており、2023年10月に「WCAG 2.2」が正式勧告となりました。操作負荷の軽減やフォーカス可視性などが強化され、より実務的な配慮が追加されています。
ただし日本では、WCAG 2.2と一致するJIS規格は未整備です。また、2025年9月4日には新たにWCAG 3.0が更新されるなど、整備に遅れが生じている状況です。今後の指標となる更新ですので、企業では常に最新のガイドラインを取り込むことが重要です。
参考:
日本版の「JIS X 8341-3」を理解する
「JIS X 8341-3」は、日本の情報通信分野におけるWebアクセシビリティ規格です。WCAG 2.0の規格に準拠しており、2025年現在は「JIS X 8341-3:2016」が利用されています。
JIS X 8341-3の適合レベル
「JIS X 8341-3」は、WCAGにも示されている「適合レベルA・AA・AAA」で評価されます。
一般に、国や自治体はレベルAA、民間企業はA〜AAが目安とされています。すべてを最高水準で満たす必要はなく、自社サイトの目的や利用者層に応じて現実的な水準を設定することが重要です。
ウェブアクセシビリティ基盤委員会では、適合レベルを達成する基準として、早見表も公開されています。
企業がやるべきWebアクセシビリティの改善ポイント

企業が取り組むべきWebアクセシビリティの対策は、デジタル庁が公開している「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」に詳しく整理されています。
ここでは、「必ず達成しなければならないもの」のなかでも重要なポイントをまとめました。
画像に適切な「代替テキスト(ALT)」をつける
引用:デジタル庁「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」
画像の代替テキスト(ALT)は、Webサイトに掲載した画像が伝える情報をテキストで補うための要素です。特に視覚障害を持つ方にとっては、ALTがなければ画像の意味を伝えられません。
特に、ロゴやリンク画像は遷移先がわかる内容にする、グラフや図表は要点を簡潔に要約する、装飾目的で意味を持たない画像はALTを記載しないといった対策が重要です。
テキストと背景の「コントラスト比」を確保する
引用:デジタル庁「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」
文字と背景のコントラスト比を調整すれば、視覚障害を持つ方だけでなく高齢者や屋外利用時の可読性を上げる効果を期待できます。ガイドラインでは、通常文字で4.5:1以上、大きな文字でも3:1以上のコントラスト比が必須です。
キーボード操作だけでサイトを利用できるようにする
引用:デジタル庁「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」
身体障害やケガでマウスが使えない利用者のために、Webアクセシビリティでは、すべての機能をキーボード操作で完結できることが必須です。Tabキーで順序よく移動でき、現在選択中の要素が枠線などで明確に表示されるWebサイトが望ましいと言えます。
フォーム表示を「誰でも理解できる形」にする
引用:デジタル庁「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」
フォームを色や位置だけで示すと、多くの利用者に伝わりません。そのため、どこに何があり、どのように対応すればいいのかを明確に示すことが重要です。また、入力に制限時間を設ける場合は事前通知や延長手段を用意しましょう。
Webアクセシビリティを改善するおすすめチェックツール一覧

Webアクセシビリティの改善やチェックを人力だけで対応した場合、改善不足につながるケースもあります。そこでミス防止に役立つのが、Webアクセシビリティの対応状況をチェックできる次のようなツールです。
- Lighthouse(Google)
- axe DevTools
- WAVE
- NVDA(スクリーンリーダー)
これらは国際標準の準拠に強いツールであるため、対応後の最初のチェックに最適です。
Webアクセシビリティを改善した企業・行政事例

Webアクセシビリティは、継続的な運用と組織的な取り組みによって成果が出る分野です。改善に取り組む企業や行政の例を整理しました。
| カテゴリ | 改善したWebサイト | 効果 |
| 行政・自治体 | 宮城県 | 県政情報と魅力情報のページを分離し、導線やUI/UXを改善 |
| 東京都目黒区 | 構造化・多言語・職員研修でAA準拠を達成 | |
| 企業 | A社(金融系) | 音声・キーボード対応で適合レベルAA一部準拠を達成 |
| B社(製造系) | UI/UXの再構築や検索改善で商品検索の効率化を実現 |
各事例に共通するのは、ガイドライン整備や職員教育を含めた体制づくりを行っている点です。Webアクセシビリティは一度対応して終わりではなく、運用し続けることが成功の可能性を高めます。
正確そして効率的にWebアクセシビリティへの対応状況を診断したいなら

Webアクセシビリティの対応状況を確認できるツールによる自動チェックは、全体の3〜4割程度しか検出できないと言われています。また、国内規格である「JIS X 8341-3:2016」に対応していないという弱みがあります。
そこで国内企業におすすめなのが「Webアクセシビリティ診断・UI検証ツール SPIRAL ISSO」です。膨大なチェック作業を一掃できる便利ツールになります。
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まとめ
Webアクセシビリティへの対応は、単なる技術対策ではなく、誰に対しても情報を正しく届けようとする企業姿勢そのものです。
WCAGやJIS X 8341-3といったガイドラインを理解することはもちろん、段階的に改善を進めることで、法制度への備えだけでなく、ユーザー体験やブランド信頼の向上にもつながります。
そこでまず実施したいのが、自社サイトの現状を把握し、「必須項目から着実に対応できているか」「利用者の立場で本当に使いやすいか」を見直していくことです。
Webアクセシビリティの対応状況を確認するためにも、この機会にチェックツールなどを活用してみてはいかがでしょうか。



