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Webアクセシビリティとは?重要な理由やメリット、実践例も解説

更新日:2026/02/09

Webアクセシビリティへの対応が必要だといわれても「なにから始めればいいかわからない」と悩んでいる方も多いでしょう。法改正により企業の合理的配慮が義務化され、すべての人が使いやすいWebサイトの実現が求められています。この記事では、Webアクセシビリティの基本から重要性、具体的な実践例まで詳しく解説します。

Webアクセシビリティとは?

「アクセシビリティ」は、「Access(近づく)」と「Ability(できる)」を組み合わせた言葉で、「製品などを利用できる」という意味を持っています。つまりWebアクセシビリティとは、年齢や障害の有無、使用するデバイスや通信環境にかかわらず、誰もがWebサイトの情報や機能に平等にアクセスできる状態をさしているのです。

対象となるのは視覚や聴覚に障害のある人だけでなく、

  • 高齢者
  • 一時的に片手が使えない場合
  • 小さな画面で閲覧している人

など、さまざまな人が含まれています。

言い換えれば、より多くの人が、より多くの場面でWebサイトを利用できるようにする取り組みといえるでしょう。

Webアクセシビリティが重要視される3つの理由

Webアクセシビリティが重要視される理由として、おもに以下の3つがあげられます。

  • 法改正と社会的責任
  • デジタル化社会における情報格差の解消
  • 高齢化社会への対応

順番に見ていきましょう。

理由1:法改正と社会的責任

2024年4月1日、障害者差別解消法の改正により、民間事業者にも「合理的配慮の提供」が義務化されました(※1)。この法改正では、障害のある人が必要としている配慮について、企業が過度な負担にならない範囲で対応する義務が課されています。

Webアクセシビリティ対応自体は「環境の整備」に該当し、努力義務にとどまりますが、合理的配慮の提供義務と密接に関連しているため、企業は真摯に取り組む必要があるのです。今後はアメリカのように、Webアクセシビリティの確保自体が義務化される可能性もあり、早期の対応が求められます。

(※1)出典:内閣府「障害者差別解消法が変わりました!」

理由2:デジタル化社会における情報格差の解消

現代社会においてインターネットは、

  • 行政手続き
  • 買い物
  • 仕事
  • 学習

など、生活のあらゆる場面に深くかかわっています。

とくにコロナ禍以降、オンラインでのサービス利用が急速に拡大し、Webサイトが使えないという状況は社会参加そのものを妨げる要因になっています。Webアクセシビリティを確保する取り組みは、情報格差をなくし、誰もが公平に情報へアクセスできる社会を実現するために欠かせません。

障害の有無や年齢、使用するデバイス環境に関係なく、すべての人が同じ情報を得られる状態を整えるのは、もはや社会の一員としての責務といえるでしょう。

理由3:高齢化社会への対応

高齢者の多くは、視力の低下や細かい操作にむずかしさを感じており、従来の小さな文字やマウス操作を前提としたWebサイトでは、満足に情報を得られない状況が生じています。高齢者向けの配慮は、視覚障害者への対応と共通する部分が多く、一度対応を行えば幅広い層のユーザビリティ向上につながるのです。

日本は世界でも類を見ない速さで高齢化が進んでおり、2024年10月1日時点で高齢化率が「約30%」に達しています(※2)。そのため今後は、増加する高齢者層に対応できるかどうかが、企業のWebサイトの価値を大きく左右するでしょう。

(※2)出典:内閣府「令和7年版 高齢社会白書」

Webアクセシビリティ推進で得られる5つのメリット

Webアクセシビリティ推進で得られるメリットとしては、おもに以下の5つがあげられます。

  • エンゲージメントと滞在時間の向上
  • 潜在顧客の獲得とリーチの拡大
  • ブランド価値と企業イメージの向上
  • コンバージョン率の改善と収益向上
  • 開発・改修コストの削減

順番に見ていきましょう。

メリット1:エンゲージメントと滞在時間の向上

アクセシビリティ対応により、ユーザーがWebサイトを快適に利用できる環境が整うと、ユーザーエンゲージメント(サイトへの関与度)が向上します。使いやすく見やすいサイトでは、ユーザーが必要な情報に素早くアクセスでき、サイト内を回遊しやすくなるため、滞在時間の増加や直帰率の改善といった効果が期待できるのです。

GA4(Google Analytics 4)で計測される平均エンゲージメント時間は、ユーザーがサイトに積極的にかかわった時間を示す重要な指標であり、検索エンジンはこの数値を評価対象としています。これらユーザー行動の改善は、Googleが定める要件を満たす効果もあるため、SEO評価の向上にもつながるでしょう。

メリット2:潜在顧客の獲得とリーチの拡大

Webアクセシビリティ対応により、これまでWebサイトを利用できなかった層へのアプローチができ、顧客層を拡大できます。障害を持つ人や高齢者だけでなく、外国人ユーザーや一時的に制約がある状況のユーザーも含め、すべての人が使いやすいWebサイトは多くのアクセスを得られるのです。

さらに、モバイルデバイスやさまざまなブラウザに対応できるようになるため、利用環境を問わず幅広いユーザー層にリーチできます。

メリット3:ブランド価値と企業イメージの向上

アクセシビリティを考慮したWebサイトは、顧客満足度が高く、企業のイメージにもよい影響があります。ユーザーに「誰もが利用しやすい」という印象を与えられれば、ブランドロイヤリティ(ブランドへの愛着や信頼)の強化につながり、長期的な企業価値の向上にもつながるでしょう。

社会的責任を果たしている企業として認知されれば、社会的信頼を得やすくなり、競合他社との差別化も可能です。

メリット4:コンバージョン率の改善と収益向上

Webアクセシビリティ対応は、最終的に企業の収益向上につながる重要な施策です。より多くのユーザーがWebサイトを快適に利用できれば、購入率やお問い合わせ率といったコンバージョン率が向上し、売上の増加が期待できます。

機会損失の防止という観点でも、アクセシビリティ対応は重要な役割を果たしており、これまで取りこぼしていた潜在顧客を獲得できるようになります。長期的には、Webサイト全体の品質が向上し、運用効率の改善にもつながるため、投資対効果の高い取り組みといえるでしょう。

メリット5:開発・改修コストの削減

新規開発や大規模なリニューアルの際に、企画段階からWebアクセシビリティへの対応を考慮すると、あとからの改修コストを削減できます。最初から標準に準拠した設計と実装を行えば、後で問題が発覚してから修正するよりも、時間的にも金銭的にも効率的なためです。

また、アクセシビリティ対応によってコードの品質が向上し、メンテナンスしやすいつくりになるため、将来的な機能追加や改修時の作業負担も軽減されます。長期的な視点で見れば、初期投資以上のコスト削減と効率化が期待できるでしょう。

Webアクセシビリティの法改正が企業に与える4つの影響

Webアクセシビリティの法改正が企業に与える影響としては、以下の4つがあげられます。

  • 合理的配慮の提供が義務化され対応範囲が拡大
  • 努力義務だが実質的な対応が必要
  • 顧客やサービス利用者への配慮も対象になる
  • 企業に与えるリスクの増加

順番に見ていきましょう。

影響1:合理的配慮の提供が義務化され対応範囲が拡大

前述したように、障害者差別解消法が2024年4月1日から施行され、民間事業者にも「合理的配慮の提供」が義務化されました。合理的配慮とは、障害のある人から申し出があった際に、事業者が過度な負担にならない範囲で必要な調整や変更を行う取り組みをさします。

改正前は行政機関のみが義務の対象でしたが、改正後はすべての民間企業が対象となり、規模の大小を問わず対応が求められています。対応義務の範囲は、自社の職場環境だけでなく、顧客を含む自社の製品やサービスの利用者にも及ぶため、企業は幅広い視点でのアクセシビリティ対応が必要です。

法律上の罰則規定はないものの、対応しない企業は社会的信用を失うリスクがあるため、企業の社会的責任として真摯に取り組む姿勢が求められています。

影響2:努力義務だが実質的な対応が必要

障害者差別解消法における「合理的配慮の提供」は義務ですが、Webアクセシビリティ対応は「環境の整備」に該当し、法律上は努力義務の位置づけとなっています。環境の整備とは、障害のある方から個別の申し出を受ける前に、あらかじめバリアを取り除いておく事前的な改善措置を意味します。

申し出を受けてから対応するのではなく、事前にWebアクセシビリティに対応しておく姿勢が企業には求められており、努力義務であっても実質的には対応が必要な状況です。

影響3:顧客やサービス利用者への配慮も対象になる

法改正により、企業が配慮すべき対象範囲が拡大しました。従来は自社の職場における障害者雇用の場面が中心でしたが、改正後は顧客や消費者を含む自社製品・サービスのすべての利用者が配慮の対象に含まれています。

具体的には、

  • Webサイトからの資料請求や問い合わせ
  • ECサイトでの商品購入
  • オンライン予約システムの利用

など、あらゆる点でアクセシビリティが求められます。

企業は提供製品やサービスにかかわるすべてのアクセシビリティを高めておく必要があり、とくにWebサイトは顧客とのおもな接点として、対応の優先度が高い領域です。

影響4:企業に与えるリスクの増加

法改正により、障害のある方からの申し出に対応できない場合、企業は社会的な批判や信用失墜のリスクを負う可能性があります。そのため、事前にWebアクセシビリティへの対策を講じておく体制づくりが大切です。とくにWebサイトは企業の顔として多くの人が利用するため、アクセシビリティの問題が発生すると企業イメージに悪影響を及ぼします。

今後も法規制が強化される可能性を考慮すると、早期に対応を始め、段階的に改善を進めた方が、企業にとってリスクが少ないといえるでしょう。

Webアクセシビリティの実践例7選

ここからは、Webアクセシビリティの実践例を7つ紹介します。

  • 画像への代替テキストの設定
  • キーボード操作だけでの完全な操作を可能にする設計
  • 色だけに依存しない情報伝達の工夫
  • 動画への字幕・キャプションの追加
  • 文字と背景のコントラスト比の確保
  • HTMLによる適切な文書構造のマークアップ
  • フォーカス位置の視覚的な明示

順番に見ていきましょう。

例1:画像への代替テキストの設定

Webサイトに掲載する写真やイラストなどには、画像が指し示している情報を代替テキスト(alt属性)として記載する必要があります。視覚に障害のある人が画面読み上げソフトを使ってWebサイトを閲覧する際、代替テキストがなければ「スクリーンショット.png」といった、意味のないファイル名が読み上げられてしまうためです。

たとえば「茶色を基調とした温かみのあるソファ」といった具体的な代替テキストを設定すれば、ユーザーは画像の内容を理解できます。ただし、装飾目的だけの画像にはalt属性を空にする(alt=””)配慮も大切で、不要な情報を読み上げないようにする工夫が求められます。

例2:キーボード操作だけでの完全な操作を可能にする設計

マウス操作がむずかしいユーザーや、一時的な怪我でマウスが使いづらい人のために、キーボード操作だけですべての機能にアクセスできる設計も大切です。ブラウザでTabキーを使ってサイトを閲覧し、フォームの入力やページの遷移がスムーズに行えるかを確認しましょう。

また、一度フォーカスしたら抜け出せないコンテンツ(キーボードトラップ)を作らないよう注意が必要です。

例3:色だけに依存しない情報伝達の工夫

色の違いだけで情報を伝えず、白黒に変換しても理解できるデザインにする配慮が必要です。色覚異常のあるユーザーや高齢者にとって「〇〇色をクリックしてください」「〇〇色を選択するとつぎのページに進みます」といった、色だけで情報を示す表現は避けましょう。

ほかにも、グラフの凡例は色だけで違いを示さず、形も変えるなどの工夫が求められます。また必須項目を示す際には、色付きの文字だけでなく「必須」というテキストや記号を該当箇所に明示する方法が有効です。白黒の表示だけで情報が正しく伝わるかを確認し、色以外の情報(形状、位置、テキスト)でも識別可能にしましょう。

例4:動画への字幕・キャプションの追加

収録済みの音声コンテンツには字幕を追加し、聴覚に障害のある人も内容を理解できるようにしましょう。字幕があれば、電車のような騒がしい場所や、職場といった音が出せない環境でも、動画の内容を把握しやすくなります。

たとえばYouTubeでは、自分のアカウントにアップロードした動画に、キャプション(字幕)を自動でつける機能が用意されています。音声のみのデータであれば音声をテキスト化したデータを用意し、音声データの直後にテキストデータを配置しましょう。ただし、用意しているコンテンツ以上の情報をテキストとして提供しないよう注意が必要です。

例5:文字と背景のコントラスト比の確保

文字色と背景色のコントラストをしっかりつけ、文字はくっきりと見やすい色やフォントを使用しましょう。視力が弱い人や色の識別がむずかしい人でも読みやすくするため、本文サイズは一般的に推奨されている16px以上に設定します(※3)。

また、見やすいサイズに自由に拡大縮小できるよう、レイアウトやフォントのサイズを相対指定にし、ブラウザの機能だけを用いて文字を200%まで拡大できるようにします(※4)。行間を詰めすぎず、漢字の続きすぎも可視性を下げるため、適度にひらがな・カタカナも使用する配慮も大切です。

(※3)出典:デジタル庁「タイポグラフィ(概要)」

(※4)出典:デジタル庁「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」

例6:HTMLによる適切な文書構造のマークアップ

ページの情報をHTMLで構造化し、色・形・配置に依存した情報が読み上げられた場合にも、十分伝わるようにしましょう。HTMLの仕様に準拠すれば、スクリーンリーダーなどが内容を正確に参照し、文章や画像の情報を適切にユーザーへ伝えられます。たとえば、縦にも横にも見出しが並び交差する表では、見出しに印をつけるとスクリーンリーダーが構造を理解できるようになります。

HTMLの開始タグと終了タグをきちんと対にして入れ、仕様に準じて入れ子構造にし、同ページ内に同じid名を2つ以上指定しないことも重要です。コーディング後にLintチェックでエラーを修正し、マークアップ言語によって適切な構文を用いるようにしましょう。

例7:フォーカス位置の視覚的な明示

キーボード操作でWebサイトを利用する際に、現在どこにフォーカスが当たっているかを視覚的に明示する、フォーカスインジケーターの表示も大切です。意味が通じる順序でフォーカス位置を変更していけるようにし、ユーザーが迷わず操作できる設計を心がけましょう。

また、

  • コンポーネントがフォーカスを受け取ったときに内容を変える
  • ページ遷移させる
  • フォームを自動で送信

しないよう注意が必要です。

フォーカスでコンテンツを変化させず、ユーザーのアクションで変化を起こさせるようにしましょう。フォーカスインジケーターを適切に表示すれば、視覚に障害のあるユーザーだけでなく、キーボード操作をするすべてのユーザーにとって使いやすいWebサイトとなるでしょう。

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まとめ

Webアクセシビリティへの対応は、2024年4月の障害者差別解消法改正により、すべての企業に求められる社会的責任となりました。誰もが快適に利用できるWebサイトを実現すれば、新たな顧客層の獲得やコンバージョン率の向上など、ビジネス面での大きなメリットも得られます。

まだ実施していない場合、まずは自社のWebサイトの現状を診断しつつ、ツールの利用も検討するとよいでしょう。

このコラムの執筆者
スパイラル編集部
スパイラル株式会社マーケティング部が中心となり、ITサービスを検討中の皆様に役立つ情報を発信しています。