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Webアクセシビリティは義務化された?罰則・ガイドライン・対応方法を徹底解説

更新日:2026/02/09

Webアクセシビリティはすでに義務化されているか気になる方は多いでしょう。実は「合理的配慮の義務化」が本質で、対応は努力義務です。本記事ではいつから義務化されるのか、罰則、総務省ガイドライン、WCAGとの関係、企業が今すべき対応を解説します。

【結論】Webアクセシビリティそのものはまだ義務化されていない

結論として、企業におけるWebアクセシビリティへの対応は、2025年現在「全面的な法的義務」ではありません。

義務化されているのはその一部である「合理的配慮の提供」です。ただし、対応しなくてよいわけではない点に注意しましょう。すでに法的義務になっているポイントもあることから、事実上の「対応必須」に近づいています。

そこでまずは、Webアクセシビリティの対応の現状と、すべて義務化されたと誤解されやすい理由を解説します。

改正障害者差別解消法(2024年4月施行)で合理的配慮のみ義務化

2024年4月、障害者差別解消法(正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)が改正されたことに伴い、これまで努力義務だった障害のある人などのマイノリティに対する「合理的配慮(不当な差別的取り扱いの禁止)」が、行政機関だけでなく民間企業でも義務化されました。

合理的配慮とは、「障害のある人から要望があった場合に、過重な負担にならない範囲で環境を調整すること」を指します。

実際、内閣府の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」では、情報アクセシビリティの向上も対象に含まれると明記されていることから、企業が運営しているWebサイトでも、近いうちに環境整備の対応が求められると推定されます。

(参考:内閣府「改正障害者差別解消法が施行されました」)

環境整備は「努力義務」のまま

現在「合理的配慮」が義務化されましたが、これに対するWebアクセシビリティ全体の整備は、現在も努力義務にとどまっています。

事業者については、不当な差別的取扱いの禁止が法的義務とされる一方で、事業における障害者との関係が分野・業種・場面・状況によって様々であり、求められる配慮の内容・程度も多種多様であることから、合理的配慮の提供については、努力義務とされている。

引用:内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針

つまり、合理的配慮と環境整備は次のように区分されます。

  • 合理的配慮:要望があった場合の「個別対応」は義務
  • 環境整備:誰でも使いやすくする「事前対策」は努力義務

このことから、2025年時点では企業では要望を受けない限りは事前対応を行わなくても、直ちに法的ペナルティを受ける可能性は低いと判断できます。

とはいえ、将来的に環境整備が義務化する可能性もあります。義務化してからの対応に追われないように、早い段階でWebアクセシビリティ対応にとりかかるのがベストです。

「すべて義務化された」と誤解される理由

Webアクセシビリティは、よく「全面義務化された」と誤解されていますが、その理由は次のように情報が混在しているためです。

  • 「合理的配慮の義務化」「Webアクセシビリティ全体の義務化」は別物
  • 海外(特に米国)の訴訟事例が日本にも当てはまると誤認されている
  • 国・自治体の対応が「法律上の義務」だと勘違いされている

たとえば、国際的なWebアクセシビリティのガイドラインは「WCAG 2.2」というバージョンであるのに対し、日本版のガイドラインである「JIS X 8341-3:2016」は、古いバージョンの「WCAG 2.0」をベースに作られています。

このように、Webアクセシビリティへの対応基準にズレがあることから、どこまで義務化されたのかわからないと混乱を招いています。

Webアクセシビリティはいつから義務化される?

いつからWebアクセシビリティの対応が義務化されるか、ある程度の予測を立てておきたい方も多いはずです。

今後の、義務化される可能性について見ていきましょう。

「義務化の施行日」はまだ決められていない

Webアクセシビリティ全体の「義務化の施行日」は、2025年現在まだ決まっていません。

国としても「いつから義務にする」と明言していませんが、義務化を前提とした運用が進められていることから、早めにWebアクセシビリティへの対応が求められます。

これから義務化の可能性はある?ない?

Webアクセシビリティへの対応の義務化は、将来的に起こりえる可能性があります。以下に想定されるシナリオをまとめました。

  1. 国や自治体、特定業種(公共性の高い分野)への義務化
  2. 一定規模以上の企業への義務化
  3. WCAGやJIS準拠レベルの段階指定(A → AA)
  4. 一般企業の義務化

ただし突然、一斉に義務化される可能性は低いと考えられます。それはWebアクセシビリティは、企業規模・業種・技術体制による差が大きく、一律で義務化すると企業の「過重な負担」になるためです。

※総務省の「公的機関に求められるウェブアクセシビリティ対応」の資料では「実施に伴う負担が過重でない場合」において、対応するものだと明記されています。

何年先になるかは予測できませんが、将来的な義務化の波に乗るためにも、この機会にWebアクセシビリティ対応を検討してみてはいかがでしょうか。

Webアクセシビリティの対応に罰則はある?

結論から言うと、日本国内においてWebアクセシビリティ未対応そのものに対する「直接的な罰則」は存在しません。

Webアクセシビリティ対応は、法律上、「環境の整備」に位置づけられており、現在も努力義務のままです。ただし、「罰則がない=何もしなくてよい」わけではありません。

努力義務である以上、社会的要請は年々強まっている点に注意が必要です。たとえば海外、特にアメリカでは、Webアクセシビリティ未対応を理由とする訴訟が急増しています。

UsableNet社の調査によると、2018年時点で2,314件だった訴訟件数が、2022年には約4,061件まで増加しました。ここからもわかるように、国内で義務化が進めば、海外と同じように訴訟を起こされるリスクがある点に注意しなければなりません。

(参考:経済産業省「情報アクセシビリティに関する国内外の先進事例」)

Webアクセシビリティが義務化されようとしている背景

インターネットは、もはや若年層だけのものではなく、以下のような人々も日常的にWebサービスを利用しています。

  • 高齢者
  • 視覚・聴覚に制約のある人
  • ケガや病気など一時的に操作が難しい人
  • 外出先・騒音環境など不利な利用環境の人

NICT(情報通信研究機構)が令和5年に発表した「高齢者のインターネット利用率」の調査によると、65歳以上のインターネット利用率は男女ともに5割を超えており、60~64歳に至っては9割以上のユーザーがWebサービスを利用しています。

このような背景もあり、Webサイトがアクセシビリティ対応していないと「高齢者が利用しても文字が読みにくく、離脱される」「フォーム操作が難しくサービスの成約につながりにくい」といった問題が起こりやすくなります。

(参考:国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)「高齢者のインターネット利用率」)

義務化の前に理解したい国際基準・国内規格(総務省ガイドライン)

Webアクセシビリティ対応を検討する際は、国際基準「WCAG」と国内規格「JIS X 8341-3」を切り分けて理解することが重要です。

ここでは、義務化が始まる前に企業が理解しておくべきポイントを紹介します。

国際基準のWCAG 2.2

WCAG 2.2(Web Content Accessibility Guidelines)は、Webアクセシビリティ分野における世界共通の国際基準です。

W3C(World Wide Web Consortium)が策定するガイドラインであり、各国の法律・規格の土台として採用されています。

「グローバルサイト」「海外向けのECサイト」「多言語サイト」などを運営する場合には、現在の最新規格であるWCAG 2.2を前提に考えるのが安全です。

WCAG 3.0との違い

WCAG 3.0は、将来の標準を見据えた「作成中のドラフト(草案)」であり、2025年現在、国際基準としてもまだ未確定の要素です。

現在の国際基準は、WCAG 2.2ですが、将来的に改良が加えられたWCAG 3.0へ移行していく可能性があります。

国内規格のJIS X 8341-3(総務省ガイドライン)

日本国内のWebアクセシビリティ対応は、「JIS X 8341-3:2016」が判断基準として重視されています。

JIS X 8341-3は、総務省・デジタル庁が公開している「みんなの公共サイト運用ガイドライン」などで採用されている国内規格です。

前述した国際基準「WCAG 2.0(現行2.2の前バージョン)」に準拠しており、適合レベルAAを最大目標としたWebアクセシビリティの対応方法などがまとめられています。

(参考:ウェブアクセシビリティ基盤委員会「JIS X 8341-3:2016 達成基準 早見表(レベルA & AA)」)

企業が取り組むべきWebアクセシビリティの対応10項目

Webアクセシビリティに対応したい企業は、デジタル庁が公開している「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック(2025年10月16日)」を参考に、制約を抱える人たちが利用できる次のようなWebサイトを構築していくことが大切です。

優先度 対応項目 失敗例
重大 音声を自動再生しない 広告や動画が勝手に音を出す
キーボードトラップを作らない 動画などからフォーカスが抜けない(ストレス)
1秒に3回超の点滅をさせない 点滅アニメで発作を起こす人もいる
自動で切り替わる動きは停止できるようにする カルーセルが止められず読めない
必須 画像に適切な代替テキスト(alt)を付与 ロゴや図表が「画像」としか読まれない
キーボードだけで全機能に到達できる マウス前提のUIで操作不能になる
フォーカス順序を論理的にする Tabキーで順番通りに移動しない
フォーカスしている場所を強調する(枠線など) 今どこを操作中かわからない
フォーカス時・入力時に勝手に動作させない 選択した瞬間に遷移/送信される
制限時間を設けない(設けるなら延長・解除・通知を設定する) セッション切れで入力が消える

紹介したのはあくまで一例です。ガイドブックにはほかにも複数の対応方法がまとめられているため、優先順位を決めてひとつずつ対応していくことをおすすめします。

ビジネスにおけるWebアクセシビリティ対応のメリット

Webアクセシビリティの対応は、ただ法令を遵守するだけではなく、WebサイトのCVRや信頼の獲得、そして将来的なリスクの低減に役立つ投資です。

たとえば、多くのユーザーが利用できるWebサイトに改善することでCVRが高まり、売上の向上を期待できます。また、誰もが利用できるWebサイトという点を顧客に評価され、クレームや炎上を避けやすくなるなど、Webサイト運営における問題点を解決しやすいのがメリットです。

正確かつ効率的にWebアクセシビリティへの対応状況を診断したいなら

徐々に対応の必要性が増しているWebアクセシビリティですが、本当に正しく対策できているのか判断できないとお悩みの方も多いのではないでしょうか。特に、国内規格である「JIS X 8341-3:2016」への対応状況は、人力でチェックする際に膨大な時間がかかってしまいます。

そこで国内企業におすすめなのが、「Webアクセシビリティ診断・UI検証ツール SPIRAL ISSO」です。Webアクセシビリティのチェック作業を大幅に効率化できる便利なツールです。

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まとめ

2024年4月に施行された改正障害者差別解消法に伴い、現在ではWebサイトで合理的配慮への対応が義務化されました。

ただし、現時点では環境整備に関しては努力義務であるため、あくまで要望を受けた場合に対応するのみで構いません。とはいえ、急に義務化となった段階で着手するのは難しいため、なるべく今のうちからWebアクセシビリティに対応しておくのがおすすめです。

このコラムの執筆者
スパイラル編集部
スパイラル株式会社マーケティング部が中心となり、ITサービスを検討中の皆様に役立つ情報を発信しています。