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ARTICLE信用金庫のアプリの提供状況とレビューについて調べてみた【やまざき調べ vol.47】
こんにちは!金融カスタマーサクセス部やまざきです。
2025年も残すところ半分ほどになりました。
銀行業務のデジタル化が進む中で、信用金庫においてもお客様向けの「バンキングアプリ」の提供が増えているようです。最近では、全国信用金庫協会が新設したデジタル戦略専門委員会が、アプリ戦略の強化を検討しています。(一般社団法人全国信用金庫協会より)
このような中で、全国の信用金庫がどれくらいアプリを提供しているのか、お客様の評価・レビューはどうなのか、気になりますよね。
そこで今回は、独自に全信用金庫のアプリの提供状況とお客様のレビュー評価を収集・分析してみました。アプリ開発や支援にかかわる皆様をはじめ、金融機関の皆様のヒントになればと思っておりますので、ぜひチェックしてください!

信用金庫のアプリにはどんな種類があるのか?

信用金庫専用のアプリ
各信用金庫が個別に提供しているアプリで、名称に信用金庫名が含まれています。
しんきん通帳アプリ
複数の信用金庫が共通で提供する通帳アプリです。インストール時に自分が利用している信用金庫を選択して使用します。
提供元:しんきん共同センター
しんきんバンキングアプリ
しんきん通帳アプリと同じく、複数の信用金庫が共通で提供していて、インストール時に信用金庫を選択する仕組みです。
提供元:しんきん情報システムセンター(SSC)
信用金庫アプリの現在とこれから
ニッキンONLINEによると、バンキングアプリのサービスはこれまで口座の残高確認のような参照系の機能に限られていました。振込機能も提供していることが多い銀行と比べて、アプリユーザーの満足度において信用金庫は厳しい状況にありました。
しかし、2024年7月にSSCが振込機能の追加に動き出すなど、アプリの提供だけではなく、操作性や機能の充実をはかるUI(顧客視点)・UX(顧客体験)を意識するようになりました。また、2028年にはしんきん通帳アプリとしんきんバンキングアプリを1つに統合する予定であることを、SSCが2025年1月に発表しています。

調査対象
今回調査対象としたのは、全国の254の信用金庫です。対象選定の基準は、前述の3種類のアプリのいずれかを提供しているかどうかです。口座開設など上記に分類されない用途のアプリは、調査対象外としました。
収集したデータは主に2種類です。
1.App StoreやGoogle Play Storeにおけるダウンロード数やレビューの値などの情報
2.各信用金庫のディスクロージャーに掲載されている情報
調査結果

コストを抑えたアプリ提供?
まずは、どれくらいの信用金庫がアプリを提供しているのか調べました。
先ほどのアプリの3分類をさらに下記の2つにまとめています。
「専用アプリ」・・・信用金庫専用のアプリ
「共通アプリ」・・・しんきん通帳アプリとしんきんバンキングアプリ

表1のように、専用か共通かを問わず、信用金庫の94%が何らかのアプリを提供していることがわかりました。デジタル化の流れが信用金庫業界でも本格的に進行し、お客様との接点がスマホへとシフトしている状況がうかがえますね。

信用金庫が提供しているアプリの種類(共通または専用)を調査しました。
表2のように、「共通アプリのみ」の割合が80%を占めています。業界全体で共通アプリの利用が主流になっていることがわかります。両方を提供しているものを含めると、信用金庫の20%が「専用アプリ」を提供しているようです。
個人的には、共通アプリを使うことで、開発・運用コストを抑えながらのデジタル化が可能なので、理にかなっているように感じます。

さらに、「共通アプリ」についても集計しました。
表3のように、「しんきん通帳アプリのみ」が最も多く、「しんきんバンキングアプリのみ」とは30%以上の差があることがわかりました。まずはシンプルに、ニーズがある機能に絞ってリリースするという判断があったのかもしれませんね。
専用アプリのレビュー評価は?
専用アプリのレビューについても調査しました。
レビューとは、各アプリ画面の星マークの箇所にある、5点満点の評価のことです。共通アプリにおける各信用金庫の評価を調査することは難しいため、専用アプリのみに焦点をあてました。

App StoreとGoogle Play Storeの両方でレビューを確認できた40アプリについて、グラフにプロットしてみました。
横軸はApp Storeのレビュー、縦軸はGoogle Play Storeのレビューを示します。プロットには右上がりの傾向が見られ、相関係数は0.65でした。片方のストアでレビューが高いアプリは、もう片方のストアでもレビューが高いことがわかります。
レビューの評価がどちらのストアでも同じような場合、レビューは偏った意見ではなく、ユーザー全体の声として信頼できる指標になりうると感じました。
一方で、一部のアプリではAndroidとiOSで評価がずれているということもわかります。このズレは、「OS別の最適化がうまくいっていない」「片方だけUIが不便」などの設計・実装上の課題のヒントになるかもしれません。
レビューの評価は信金の規模に応じたレビュー件数が大事?
Google Play Storeのレビューを確認できた40件のアプリについて、レビューの数値にどのような要素が影響しているのかを調べました。
高いレビューを獲得するためには、資金量(=規模)に応じたレビュー件数が必要ではないか?とという仮説のもと、Google Play Storeのレビューについて「信用金庫の資金量やエリア、出資会員数、アプリのダウンロード数・レビュー件数」といった5つの要素をもとに、シンプルな条件の組み合わせでパターン分けを行い分析をしてみました!

図2のグラフの横軸は資金量を、縦軸はGoogle Play Storeのレビュー件数を、プロットの赤色が濃くなるほどレビューが高く青色が濃くなるほどレビューが低いことを示します。
これを見ると、資金量(=規模)が多くなるほど評価も高くなるという相関性が出ているようです。規模の大きな信用金庫は、お客様のご要望をアプリに反映していき、満足度を高めていくという取り組みを行っており、その結果レビュー数が増えているのかもしれませんね。
一方、資金量が少ない信用金庫では、レビュー件数が少なくても高評価されている点が目立ちます。小規模な信用金庫ほど、地域密着型の運営をしており、地域とのつながりの強さや、熱心なユーザーの好意的な声がレビューに表れやすく、それが高評価につながっているのかもしれません。

まとめ
信用金庫におけるバンキングアプリの役割は年々高まっており、現在ではほとんどの信用金庫で何らかのバンキングアプリを提供しています。そのうち約半数が「しんきん通帳アプリ」を使用しています。
アプリの利用が広がる中で、レビュー評価は、お客様にとって信用金庫のサービスを評価する指標の1つになりつつある、と考えられます。
こうした背景を受けて、アプリの質や使いやすさの改善・見直しを検討する信用金庫も増えてくるのではないしょうか。
弊社では、信用金庫アプリについての導入支援実績がございます。ご興味がございましたら、ぜひお気軽に弊社にご相談ください。
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参考文献
2025年度全信協事業計画(一般社団法人全国信用金庫協会 閲覧日:2025年6月5日)
信金、個人向け業界アプリ刷新 28年から一本化し提供(2025年1月31日 ニッキンONLINE 閲覧日:2025年6月5日)
信金、「振込」追加し利便性向上 NTTデータアプリで順次(2024年11月24日 ニッキンONLINE 閲覧日:2025年6月5日)